違いは、科学的根拠と熊本唯一の専門性

シリーズ発達障害②

前回の発達障害①では、発達とはなんなのか?について考えてきました。

過去行われてきたような、原始反射の統合により発達を考えることには限界がきていることをお伝えしました。

発達は、1+1=2の世界ではありません。脳と身体と環境の相互作用により自己組織的にその解が導かれます。

今回は、発達障害の理解について考えていきます。

1.発達障害の有病率は?

日本でも発達障害(神経発達症)という言葉を聞く機会が増えました。

それだけ発達障害が認知されてきたからだと思います。

では、日本での発達障害の有病率はどれくらいだと思いますか?

実は、現在まで日本では全国的な調査はおこなれていません(DSM‐5を含む)。

2020年に弘前大学による一部地域(弘前市)を対象とした全5歳児の疫学調査では、自閉症スペクトラムの疾病率は3.22%ということでした。

この3.22%という数字は世界的にみても特別に多いというわけではありません。

しかし、2021年に発表された信州大学の全国データベースを使った研究では、2009年から2019年にかけて自閉症スペクトラムの診断が増加しているとの結果になりました。

この結果の傾向は、日本だけでなくアメリカのCDC(アメリカ疾病予防管理センター)の結果と一致しており、同じく、ADHD(注意欠如多動性)の疾病率はCDCの調査では9.8%であり、日本でも同様に自閉症スペクトラムとADHDの割合の傾向がデータから予測されます。

2.発達障害とは

発達障害は神経発達症とも言われますが、第1回でもお伝えしたとおり脳内の脳神経システムの発達の問題になります。

その症状は、複雑であり個人差がある事が特徴です。

大きく分けて3つに分類されていますが、そのほとんどが複数の症状として出現する事が多いです。

①自閉症スペクトラム:以前は自閉症と言われていました。言葉の発達の遅れやコミュニケーションの問題、特定の対象へのこだわりや反復的な機械的な動きなど複雑な障害をもちます。その複雑で複数存在している症状が断定的ではなく連続性があることことから、連続性という意味があるスペクトラムという言葉を使用して自閉症スペクトラムと表現されています。

②ADHD(注意欠如多動症):物忘れや興味が点々とする不注意、じっとしてられないことやおしゃべりし続けるといった多動の症状が特徴的です。一つのことに集中することが難しく、最後まで遊びや活動をおこない続けることが苦手です。

限局性学習障害(SLD):特徴として知能の遅れはないものの、『読む』『書く』『計算する』の3領域に限定した習得の困難さがみられた場合、限局性学習障害とされます。その中でも、読み書きの障害が強く出現する場合に「dyslexia(ディスレクシア)」と認められます。

これらの障害は最初にお伝えしたとおり、一つ一つと区別して症状が出現するよりも、複数重複した状態で障害が出現します。

そして、これらの発達障害と併発する事が多い発達性強調運動障害(DCD)の問題もあります。

これらは骨折や変形などの症状とは違い、外見から判断することが難しく、その症状が表面化するのは生活環境や学校での活動の中であり、親が気が付かないところで子ども自身が悩み苦しむという事があります。

3.発達障害の原因は??

日本をはじめ様々な国では、1990年代初頭からADHDの症状が現れたお子さんたちのデータが集計されていますが、それまでこれらの問題は子どもの育て方や心の問題と考えられていました。

しかし、脳の解剖やMRIによる精密な検査により、脳神経システムの発達の問題が指摘されました。

とくに、感覚神経のネットワーク(感じた感覚を脳へ情報として送る神経)の不安定性が問題視されています。

人間は、感覚を常に全身から脳へインプットしながら運動を出力しています。

その感覚は重力感覚や目の情報、におい、皮膚や関節、筋肉の感覚などありとあらゆるものになります。

その感覚を元に、神経ネットワークの効率化を図りつつ、より強固なネットワークを脳内で構築し、運動をより適切に出力します。

2009年(Hoon AH, et al. Sensory and motor deficits in children with cerebral palsy born preterm correlate with diffusion tensor imaging abnormalitiesin thalamocortical pathways. Developmental Medicine & Child Neurology, 51(9), pp697-704, 2009)の研究では、脳性麻痺のあるお子さんの場合、運動が上手に行えない原因は運動の神経システムに問題があると考えられていましたが、最近では感覚のネットワークに問題があることが分かりました(つまり、運動が苦手でも感覚が問題があるということです。)。

そして、現在の発達科学では研究が進み発達障害と脳性麻痺は連続性のあるスペクトラムとして考えられています。つまり、全く違う障害として捉えられていた脳性麻痺と発達障害は、感覚を中心とした脳神経システムの問題によって運動が障害された運動のスペクトラムとして捉えられています。

これらの事から、発達障害のお子さんの発達を促すためには、感覚が重要だということが分かります。

4.まとめ

発達障害についてまとめてきました。

最新の発達科学では、発達障害と脳性麻痺は運動障害のスペクトラムとして捉えられていることに驚いた方も多いのではないでしょうか?

麻痺の有る無しや外見上の特徴ではなく、その脳神経システムがどのような障害を受けているか?が重要です。

現在、以前と比較しとても増えた発達を支援する事業所である発達支援事業所や放課後等デイサービスではどのような支援が行われていますか?

運動や学習といったできない事や苦手な事に着目しているものの、その根本的な問題の解決は行えているでしょうか?

脳神経システムの問題である以上、できない事を反復して行うような学習指導や根性論では解決できません。

また、発達支援を行っている専門家から『その子の個性を伸ばす』といった言葉を聞くことがありますが、本当にそれで子どもたちは将来苦しまずに、その子らしく自立した生活を送る事はできるのでしょうか?

次回は、ライトスウェルではどのような支援を行っているのかについてブログを投稿したいと思います。

発達科学と科学的根拠に基づき最適な発達支援ができるように。

ぜひ、次回も見ていただけると幸いです。

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