違いは、科学的根拠と熊本唯一の専門性

シリーズ発達障害③ライトスウェルの発達支援

今まで発達障害の事を知るシリーズとしてブログを投稿してきました。

第1回では、発達とは何か?

第2回では、発達障害とはなにか?

そして最終回となる今回は、では発達障害の子ども達に我々は何をご提案できるのか?について考えていきます。

書店やインターネット上には、様々な情報が乱立して何が正しいのか?と混乱することも多いと思います。

そこで発達科学に基づく最新の情報を知って頂きつつし、ライトスウェルでの取り組みについてお伝えします。

1.発達。それは、1+1=2ではない世界。

子どもたちはいつから発達しているでしょうか?

生まれた時から??

一般的には出産して発達の指標となる『発達のマイルストーン』に沿って直線的に成長・発達していく。と思われていることがとても多いと思います。

しかし・・・

もちろん生まれた時ではなく、お母さんのお腹の中にいて生れる前からすでに発達は始まっています。

双子では、お腹の中でも相手を思いやっているし、お腹の中でみられる吸啜反射とよばれるものは実は意識的であったという事が分かっています。

つまり、お腹のなかでは子ども達はすでにスクスクと発達しようとしているんです。

さらに、発達を考える上で、気になっている方が多いのが原始反射です。

原始反射は統合しているか?ハイハイを行ってきたか?と気にされる方も増えてきました。

もし、一般的にハイハイを始める8~10カ月頃を過ぎてもハイハイがみられなかったり、または全くハイハイを行わずに歩きだしたとしたら、大丈夫かな?と思われ専門家の方へ質問される方もいらっしゃると思います。

質問した結果言われる答えのほとんどは、『発達には個人差があるので』という返答。

早い子では、ハイハイを5カ月から行う子もいます。

でも、全く行わない子もいます。

それが、個人差って言葉で済まされるのって不思議ではありませんか?

これらを個人差として捉えられてきた事には、実は理由があります。

それは今まで、発達は直線的なものとして考えられてきたからです。

つまり、今まで発達は、1+1=2(x軸とy軸があれば解がでる)というふうに考えられてきたからなんです。

その直線からはみ出たら、個人差とされました。

もちろん、『発達のマイルストーン』は膨大なデータによる時期の指標なので目安にできますが、絶対ではありません。

ご両親と子どもの関係、家庭環境と子どもの関係、地域と子どもの関係、ご自宅の構造と子どもの関係など多種多様な環境とヒトとの相互作用により、子どもは発達していきます。

つまり、1+1=2では表すことができません

このことを非線形力学・複雑系(自己組織化)といいます。

原始反射も同様です。

原始反射は、脳が大きくなれば反射が統合され反応に変わるといった神経成熟(階層)理論をベースに考えられてきました。

発達は、脊髄・脳幹→中脳・小脳→大脳皮質といった説明をされる方も多いです。

しかし、この考え方には発達を考えるうえで限界があります。

原始反射は、とある刺激または姿勢(誘発反応)をとった時に必ず誘発される運動として定義されていますが、児によって出現しない子もいれば、誘発反応の中には生後数か月たってからあらわれるものもあります。

また、原始反射と思われていたものが、子どもの意識的な反応であったり(先ほどの吸啜反射も)、子どものうちに統合されていると思われていた原始反射が実は大人でも出現していることも分かってもいます。

これまで原始反射の消失は大脳皮質の成熟によって脊髄が抑制されることによって生じる現象だと説明されてきました。

つまり、原始反射は発達が進んでしまうと不必要なものになるといった考えとなり、大脳皮質の成熟によって脊髄が抑制されるという単純な機構だけでは、運動の発達過程全てを説明することができません。

すでにデータがそろってきた現代では古典的な考えである原始反射を統合する事で発達を促すということが説明できないんです

2.発達は直線ではなく、U字型の変化を行う。

ここで、発達は直線的ではないことについてさらに深堀りしてみます。

発達過程には、ある時期になると消えてしまうものや、一度消失した後で再び現れる変化をするものがあります。

このような変化を発達のU字型の変化と呼ばれています。

胎児期に現れたものが新生児にもそのままみられ生後数か月に一度消失し、随意的(意識できる)な運動としてふたたび現れるという変化をたどります。

分かりやすい例だと、歩行(歩くこと)です。

歩行の発達では、新生児を支えて立たせると原始歩行と呼ばれる運動がみられます。歩くような動きですね。

しかし、数か月すると原始歩行はみられなくなり、1年経過すると自立した歩行がみられるようになります。

つまり、運動パターンが一度消えてから再び現れるというU字型のカーブを描きます。

もちろんこれらのU字型変化の発達は、直線的な発達でも原始反射の統合でも説明できません。

これは、非線形力学・複雑系(自己組織化)の視点が必要だと考えられています。

簡単にお伝えすると、無秩序(カオス)な動きがクラスタリングされ結果的に効率的な動きとなるということです。

胎児期から新生児期にかけて、仰向けで寝ている赤ちゃんはバタバタと無秩序(カオス)な動きをします。

これを、ジェネラルムーブメントといいます。

新生児期初期は、ライジングムーブメントと呼ばれるバタバタとした全身的な粗大な運動がみられますが、2カ月頃になるとフィジティムーブメントというパターンに変化し、休みなく滑らかに全身の各部分の屈伸を繰り返すような運動がみられます。

そして3カ月頃になると手で何かを触ったり、手を伸ばしたりとジェネラルムーブメントは無くなっていきます。

バタバタ➡滑らかな運動

つまり、無秩序な動きが効率的な動きに変わっていったということです。

これらは、身体と脳と環境の相互作用により感覚を受け取りながら運動へ変換されていると考えられます。

最初は、無秩序な動きだとしても、感覚が入力され運動へ出力されるごとに秩序だった動きへ発達しています。

動きがみられるということは、脳神経系システムのネットワークができているという事です。

そして、動きなどの運動というのは手足の動きだけに留まりません。

食事や会話やコミュニケーション、理解や認知などすべて運動になります。

このような、発達に重要な非線形力学・複雑系(自己組織化)のリハビリや支援をを熊本で唯一ご提案しているのがライトスウェルです。

3.発達に重要な自己組織化の視点に基づく支援

発達は、直線的ではないということが分かりました。

発達は、原始反射の統合によるものでは説明できない事がわかりました。

発達は、非線形力学・複雑系であり自己組織化です。

身体と脳神経系と環境の相互作用により発達がおこなわれるということです。

つまり、感覚を受け取り、脳で変換され、運動として出力される自己組織化の視点が重要です。

発達障害と診断されたお子さんや、発達遅滞と考えられるお子さんの身体を拝見していると、定型発達児と比較しいくつかの違いに気が付くことがあります。

それは、眼振の有無や全身を包んでいる感覚のセンサーがある結合組織の硬さの違い、足部構造の違い、腹圧の弱さ、身体の地図(ボディスキーマ)の崩れなど様々です。

それらの、感覚情報の不一致(崩れ)が生じているのに、療育施設でトランポリンやボール遊びなどの感覚遊びを行っても、崩れた情報は脳内で崩れた脳神経系のネットワークを作ってしまいます。

感覚はただただ入力するだけではダメなんです。

その理由として、みなさんは感覚統合療法というアプローチをご存じでしょうか?

感覚統合療法は、アメリカで開発され1980年代に日本に導入されたとても古いアプローチになります。

この感覚統合療法というアプローチは、オーストラリア(シドニー大学)の作業療法士で教授であるノバック先生により『行わない方が良い』という大規模研究によるデータが提出されました。(Novak I, et al. : A systematic review of interventions for children with cerebral palsy: state of the evidence. Dev Med Child Neurol. 2013 Oct;55(10):885-910.)

これは、システマティックレビューというとてもエビデンスレベルが高い研究となります。

脳性麻痺児に対する研究ではありますが、脳性麻痺児と発達障害児(発達性協調運動障害児)は運動障害のスペクトラムとして考えられていることを踏まえるとやはり発達障害児に対しても行わない方が良いと考えられています

4.ライトスウェルでの発達支援

地球上で生活している以上子どもの発達に関して、感覚はとても重要です。

しかし、先ほどの研究でもあるように、トランポリン遊びやボール遊びなどただただ入力された感覚は意味がないものになるだけでなく、崩れた脳神経系システムのネットワークを構築させてしまいます。

ライトスウェルでは、発達に重要な感覚をただただ入力するのではなく、眼球運動や結合組織の硬度、足部構造、身体図式、腹圧(体幹機能)、前庭感覚などを最新の発達科学に基づき適切に評価し、さらに一人ひとりに合わせて調整を行ったうえで、自己組織的に脳神経システムのネットワークが構築されるように支援を行います。

また、発達支援においてエビデンスレベルが高いとされている感覚運動経験に基づく介入を行いつつ、ご両親に対しても日常での関わり方についてご提案させて頂いています。

いまだに熊本では、感覚統合療法や原始反射の統合といった古典的な考えによるアプローチを行っている支援も多くみられます。

子どもの発達は、全身で感覚を受け取りながら1日1日大きく成長発達しています。

今後もライトスウェルでは、良好な身体状態によって適切な感覚入力と感覚運動経験に基づく介入を行いつつ、将来も一人ひとりが笑顔で自分らしく生活できるように支援させて頂きます。

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